野良猫

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京都香港野良猫

野良猫
親戚の家に野良猫が一匹居候した。
日が傾くと、窓辺にあった木製の椅子で臥せ、雲の茂る遠い山の真上を見つめていたよう、鱗の浮遊した目に異様な光を放って何とも言えない禍々しい予感が隠れた。
 歳を取ったかなあ、動きが鈍くなった。痩せた体に手をそっと触れて見ると、驚かされた。骨一本一本が縦横に引かれた猫という容器に濁った呼吸が満ちた。息吹の振動が指先を伝わって、確かに命を盛っているよと宣言されたが、死に差し掛かっている存在であるとよくわかった。
 人間の言葉が煩わしく、テレビを点けるとすぐ厨房のほうへ逃げ出した。真っ黒な毛で覆われている体が薄い闇の中に溶け込んでしまった。
 日光の動きによって突如消え不意現れ、老いた時間の集積したこの影を目で追えば追うほど息が苦しくなった。
 名前がない野良猫は陽だまりの中にいつものように丸くして、静寂を聞いている古い石に変わった。